神社に参拝すると、鳥居をくぐったすぐの所や、本殿の手前に「祓戸社」を見かけることがあると思います。そこに祀られている神様が祓戸大神です。
神様は禍事・罪・穢れを嫌います。ですから、神社の本殿に参拝する前に禍事・罪・穢れを祓っておかなければならないのです。そのために祓戸社があり、祓戸大神が祀られているのです。
ですから、神社を参拝される場合は、まずは祓戸社があるかどうかを確認しましょう。
あれば必ず真っ先に参拝して下さい。なければ水神様や住吉社なんかを探しましょう。
では、祓戸大神とはどのような神様なのか、ご紹介していきますね。
祓戸大神は神々の総称
天照大御神や須佐之男命など神社に祀られている神様の多くは、古事記や日本書紀などの神代の神話に登場しますが、祓戸大神は記紀では登場しません。
では、どこに登場するかというと、祓詞や大祓詞という祝詞に登場します。
祓詞
様々な神事の冒頭に、神様への挨拶として奏上されるのが「祓詞」。
掛けまくも畏き 伊邪那岐大神 筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に 禊ぎ祓へ給ひし時に 生り坐せる祓戸の大神等 諸々の禍事・罪・穢 有らむをば 祓へ給ひ清め給へと 白すことを聞こし召せと 恐み恐みも白す。
かけまくもかしこき いざなぎのおほかみ つくしのひむかのたちばなの をどのあはぎはらに みそぎはらへたまひしときになりませる はらへどのおほかみたち もろもろのまがことつみけがれあらむをば はらへたまひきよめたまへとまをすことを きこしめせとかしこみかしこみもまをす
このように、祓詞では祓戸大神等のことを、伊邪那岐大神が阿波岐原という川か海かで禊祓いをしたときに生まれた神々だと定義しています。
では、禊祓いで生まれた神々とはどんな神様かというと、、、
(古事記と日本書紀ではちょっと違うのですが、ここでは古事記をご紹介しますね。)
伊邪那岐命の禊祓で生まれた神々
伊邪那岐大神は、黄泉の国で穢れた体を清めるために、禊祓をしようと思いました。
そして、海(川かも)に入る前に身に付けていた衣装を脱ぎ捨てました。その持ち物それぞれから神が生まれました。
- 杖・・・衝立船戸神(つきたつふなとのかみ)
- 帯・・・道之長乳歯神(みちのながちはのかみ)
- 袋・・・時量師神(ときはかしのかみ)
- 衣・・・和豆良比能宇斯能神(わづらひのうしのかみ)
- 袴・・・道俣神(ちまたのかみ)
- 冠・・・飽咋之宇斯能神(あきぐひのうしのかみ)
- 左腕輪・・・奥疎神(おきざかるのかみ)
- 左腕輪・・・奥津那芸佐毘古神(おくつなぎさびこのかみ)
- 左腕輪・・・奥津甲斐弁羅神(おきつかひべらのかみ)
- 右腕輪・・・辺疎神(へざかるのかみ)
- 右腕輪・・・辺津那芸佐毘古神(へつなぎさびこのかみ)
- 右腕輪・・・辺津甲斐弁羅神(へつかひべらのかみ)
次に、流れの中流で清めたときに、伊邪那岐大神に付いていた黄泉の国の穢れからも神が生まれました。
- 八十禍津日神(やそまがつひのかみ)
- 大禍津日神(おほまがつひのかみ)
その禍を直すための神が生まれました。
- 神直毘神(かむなおびのかみ)
- 大直毘神(おほなおびのかみ)
- 伊豆能売(いづのめ)
次に、潮流の底で清めたときに生まれた神は、
- 底津綿津見神(そこつわたつみのかみ)
- 底筒之男神(そこつつのをのかみ)
次に、潮流の中ほどで清めたときに生まれた神は、
- 中津綿津見神(なかつわたつみのかみ)
- 中筒之男神(なかつつのをのかみ)
次に、潮流の表面で清めたときに生まれた神は、
- 表津綿津見神(うはつわたつみのかみ)
- 表筒之男神(うはつつのをのかみ)
最後に、顔を漱いだときに生まれた神が、三貴子と呼ばれる、
- 左目・・・天照大御神
- 右目・・・月読命
- 鼻・・・建速須佐之男命
このように、禊祓いで生まれた神々は26柱もいらっしゃいす。
でもこのうちの禍津日二神、直毘神二神、綿津見三神(少童命三神)、筒之男三神(住吉三神)、三貴子の合計13柱は、「祓戸大神たち」から除外されるというのが一般的な見解のようです。
ですから、緑のマーカーを引いた神々の総称を祓戸大神と呼ぶことになりますね。
大祓詞(おおはらえことば)
一方、大祓詞は大祓神事で奏上される祝詞です。
大祓神事は、年2回行われる祓いの神事で、6月末は高温多湿による疫病などの禍事を祓うため、12月末は新年を迎えるにあたり一年間の罪穢れを祓い清めるために行われてきました。
わりと長い祝詞ですので、祓戸大神が登場する部分だけを切り取りますと、、、
遺る罪は在らじと 祓へ給ひ清め給ふ事を 高山の末 短山の末より 佐久那太理に落ち多岐つ 速川の瀬に坐す瀬織津比賣と言ふ神 大海原に持ち出でなむ 此く持ち出で往なば 荒潮の潮の八百道の八潮道の潮の八百會に坐す 速開都比賣と言ふ神 持ち加加呑みてむ 此く加加呑みてば 気吹戸に坐す気吹戸主と言ふ神 根底國に気吹き放ちてむ 此く気吹き放ちてば 根國 底國に坐す速佐須良比賣と言ふ神 持ち佐須良ひ失ひてむ 此く佐須良ひ失ひてば 罪と言ふ罪は在らじと 祓へ給ひ清め給ふ事を 天つ神 國つ神 八百萬神等共に 聞こし食せと白す
のこるつみはあらじと はらへたまひきよめたまふことを たかやまのすえ ひきやまのすえより さくなだりにおちたぎつ はやかはのせにます せおりつひめといふかみ おほうなばらにもちいでなむ かくもちいでいなば あらしほのしほのやほぢのやしほぢの しほのやほあひにます はやあきつひめといふかみ もちかかのみてむ かくかかのみてば いぶきどにますいぶきどぬしといふかみ ねのくに そこのくににいぶきはなちてむ かくいぶきはなちてば ねのくにそこのくににますはやさすらひめといふかみ もちさすらひうしなひてむ かくさすらひうしなひてば つみといふつみはあらじと はらへたまひきよめたまふことを あまつかみ くにつかみ やほろづのかみたちともに きこしめせとまをす
このように、世の中から罪や穢れが消え去っていく過程を解説してくれてます。
- 川の瀬にいる瀬織津比売神が、川に流して海まで持ち出します。
- 持ち込まれた罪を、潮流渦巻く海にいる速開都比売神が、ガブガブと呑みこんでくれます。
- 呑み込んだ罪は、風を起こす気吹戸主神が地底の国に吹き払ってくれます。
- 地底の国にいる速佐須良比売神が、その罪を持ってさすらっているうちに、罪は消えてしまいます。
大祓詞では、祓戸大神を瀬織津比売神・速開都比売神・気吹戸主神・速佐須良比売神の四神としていると言ってもいいと思います。実際、神社にある祓戸社の大半が、この4柱の神々をお祀りしてます。
祓戸大神のご神徳は ” 祓い ”
ここまでのお話で、なんとなく、祓戸大神は諸々の禍事、罪、穢れを祓う神様なのね~ということはわかりました。
禍事、罪、穢れとは
では、禍事って?罪って?穢れって?
そもそも、祓うってどういうこと?
という疑問が湧いてくるのではないでしょうか。
禍事(まがごと)は「曲がりごと」で、わざわい・良くない出来事のことです。同じ「わざわい」で「災」という字を使うこともあります。
災は運命によって引き起こされる災害を指すのに対して、禍は人間の営みによって起こされるものまで含めていうらしいです。
罪(つみ)は、犯罪という意味での罪も含めて、もっと広い意味での「よくない行い」のことをいいます。例えば、ウソをつく、悪口を言う、責任転嫁、食べすぎ飲みすぎ、喫煙などなど、生活の中で「これって良くないよね」と思いつつもついついしてしまっていることも、神道では罪となるのです。
穢れは、「気枯れ」が転じたものといわれています。「気枯れ」は生気を失って元気がなくなる様子を指しますから、穢れるというのは、そういう状態になっているということです。
つまり、人は知らず知らずに罪を重ね、その積み重ねで穢れていき、最後には禍事が引き起こされるわけですね。
ダメだと思いつつも食べすぎ飲みすぎ、太ってきて、最後には糖尿病になる、、、このような生活を戒めなさいという教えでしょうか。。。
祓戸大神のご利益
これらの罪、穢れ、禍事を不浄のものとして、これらを浄化させる儀式のことを「祓い」といいます。
祓戸大神は祓いの神ですから、そのご神徳「浄化」によって悪い者が取り払われ、それがすべてを良い方向へと向かわせてくれるという意味で、「厄払い」に加えて「心機一転」「起死回生」をご利益としたいと思います。
では、神様のご加護とGORIYAKUさんが、
皆さまのもとに舞い降りますように、、、
ありがとうございました。
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